世界は一変しました。リモートワークの普及と、ビデオ会議やオンラインのプラットフォームの活用によって、会議に出席するためだけの通勤時間はなくなりました。患者の48%が何らかの形で遠隔医療を受けており、今後も増加が見込まれています。多くの大学において、オンライン学習やハイブリッド学習の導入が拡大しています。

こうした「非同期型」の学習には、従来の教室での対面学習よりも優れている点があります。例えば、学生は知識を基盤とした、より格差の少ない学習体験ができるということです。また生活のためのアルバイトに時間を割かなくてはならない学生でも、授業を受講できるチャンスがあるのです。しかし同時に、リモート環境には社会的な交流が減り、フィードバックが遅くなるという課題もあります。

2021年秋学期に完全な対面授業に戻す予定の大学は、調査対象の3000校のうちわずか4%に過ぎません。オンライン学習業界は毎月数十億ドルの規模で成長しているため、大学はより適切なシステムを選べるはずです。こうした新しい授業体験の成否の鍵は、「非同期型」「エンゲージメント」という2つの言葉です。効果的な非同期型エンゲージメントには、学習率や定着率の向上といった明らかな効果だけでなく、孤独感の軽減や学生のつながりの感覚といった、より抽象的な効果もあります。

イリノイ州立大学の特別支援教育の助教授、Tara Kaczorowski博士は、エンゲージメントは「振り返りとディーププロセシング」「人と人とのコミュニケーション」「コンテンツの適用」の3つの部分から構成されると説明しています。教師がなすべきことは、この3種類のインタラクションをオンライン授業のカリキュラムに織り込むことです。このことによって、学生を惹きつける授業の設計が実現するのです。

人と人とのコミュニケーション

1対1のコミュニケーションは、非同期型授業で学生を惹きつけるための最初の鍵です。学生がグループ全体でのメッセージによるコミュニケーションしか経験していない場合、それは人間味のないものに感じられます。その結果、学生は課題やコースの求める要件を完遂しようという責任を感じなくなってしまいます。学生とのコミュニケーションを明確に個人的な方法で行い、学生がお互いの考えや洞察を感じられる場を設けることは、実際の社会に存在する、人と人の相互作用の経験をより正確に再現することになります。

これを実現する最も効率的な方法は、学生とのコミュニケーションにビデオを使用することです。ビデオコンテンツを見ることは、人間の視覚と聴覚の両方を活用するため、より人間らしい体験となります。次に、ビデオやその他のリソースを非同期型の主題に統合するためのいくつかの提案を紹介します。

教師と学生のコミュニケーション

まずは週ごとの「導入ビデオ」から始めましょう。このビデオによって、学生はあなたの意図を知り、自分が独りよがりで学習を進めているのではないと理解できます。学生がタスクをこなすためには、誰かが船を導く必要があるのです。この「導入」の時間を使って今後の課題を説明したり、先週出てきた質問を確認したりできます。すべての学生が持ちそうな疑問に最初に答えておくことで、時間を節約しつつ、問題を解決できます。また大きな課題がある場合は、プラットフォーム上で動画で説明を行い、学生が質問できるように動画にコメントを埋め込むこともできます。

非同期型授業にビデオを取り入れるには、ビデオ講義という方法もあります。録画しながら即興で講義をするのではなく、あらかじめ講義の台本を作っておくことで、学生を飽きさせないようにできます。ただし台本を読みっぱなしのロボットのような口調ではいけません。学生を集中させるためには、普段の会話のようなスピードとトーンを保ち、必要以上にペースを落とさないようにしましょう。

学生のフィードバックを受ける機会を定期的に設け、そのフィードバックに常に迅速に対応します。「その場で質問する」機会が非同期型の学習では通常ありませんので、迅速なフィードバックが必要です。フィードバックを求めるビデオを投稿し、学生がコメントできるようにすれば(学生自身のビデオでも可)、視覚と聴覚を使って有意義なやり取りができます。また学生がアンケートに答えたら、何かインセンティブを与えるという方法もあるでしょう。

学生と学生のコミュニケーション

ディスカッションボードにも触れておきます。これは、従来の教室で学生が手を挙げて返事をするように、学生同士の交流を促進したいという自然なニーズから生まれたものです。しかし「1回投稿、2回返信」などの条件が学生に課せられると、強制的で煩わしい作業になります。学生は、単に「要件を満たせばいい」と感じるかもしれませんし、最悪の場合、授業とは関係のない話題を共有しているかもしれません。

この問題は、ビデオディスカッションボードによって大幅に改善できます。ビデオディスカッションボードは、上記の問題を非常にシンプルな方法で解決します。トピックに対する回答をタイプしたり、他の人の投稿に文字でコメントしたりする代わりに、カメラに向かって回答を話しているビデオを投稿するのです。自分が話している様子を動画で撮影したり、他の人が話している様子を動画で見たりすることは、実は文字を読むよりも短い時間で済むことが多いのです。さらにこの方法は、理解度や関与度を高めることにもつながります。Vosaicを使えば、教師がビデオの特定の場面にビデオで質問を添付し、それに対して学生がビデオや従来のテキストで回答することができます。

最後に、プロジェクトやさらなるディスカッションのために学生の小グループを作ることで、授業の目的やソーシャルディスタンスの条件を満たしつつ、適切な交流を行うことができます。少人数のグループなら、ビデオ会議システムを使って都合の良い時間帯に集まることもできます。

コンテンツの活用

コンテンツを利用して実生活のシナリオをシミュレートする方法を見つけることは、対面型、非同期型を問わず、あらゆるコースに参加するための重要な要素です。そのためには通常のアプリケーションに加えて、リモート学習に適した工夫が必要となります。

コンテンツやアプリケーションを導入する方法は、授業で学習する内容によって大きく異なります。多くのプラットフォームで提供されている、分野別のオンラインシミュレーションが適する分野もあります。同様に、小グループでケーススタディを作成し、各メンバーに役割と組織構造を与えて実行させる方法もあります。

また自宅で学生と友人、家族との間でロールプレイをさせる方法もあります。学生は自分の好む方法でロールプレイを録画し、共有プラットフォームにアップロードして振り返りや採点に役立てることができます。

いずれの方法でも、フィードバックのサイクルを利用することで、参加意欲をさらに高めることができます。学生が何度も自分で修正し、教師と接する機会が増えれば、学生は自分の作品に高い責任感とオーナーシップを感じるようになります。

振り返りとディーププロセシング

ディスカッションボードとビデオディスカッションボードの活用法を確立すれば、それらを使用して振り返りとディーププロセシングに取り組むことができます。クリティカルリーディングのプロンプトでは、ビデオディスカッションボードでの回答を要求することで、学生はコースの内容に没頭できます。プロンプトを使って、学生が提供されたコンテンツを実際に読み、考えていることを確認できます。

またプレゼンテーションやデモンストレーションなど、コースに関連したフィールドビデオを学生に見てもらいたい場合、Vosaicは学生が振り返りしたりコメントを残したりできるよう、質問やプロンプトを特定の場面に埋め込むこともできます。Tara Kaczorowski博士は、ビデオの長さを8~20分にして、学生が最後まで飽きないように定期的にプロンプトを追加することを提案しています。

課題の完了を示す評価は、学生にエンゲージメントの感覚を与えることができますが、質問にどれだけ正確に答えているかを評価できません。この方法では、学生は自分が授業課題についていけているか、自己チェックすることができます。

最後に、学生が非同期型授業に積極的に参加するかどうかは、教師の熱意次第です。教授がコンピュータを使ったコミュニケーションに関心を持てば持つほど、学生の学習効果は高まるのです。


この記事はVosaic.com内の記事「Asynchronous Engagement」を翻訳したものです(画像とも)。専門用語の翻訳の正確性については保証いたしかねますので、もし訳文に疑問がある場合は、原文をご参照ください。


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