誰しも医療コミュニケーションの重要性を認識しています。しかし医療従事者としての教育の中で、最初のコミュニケーションコース(用意されている場合)が終わると、それを実践で役立てるための継続的、積極的なステップは用意されていません。また医学生の中には、医療コミュニケーションの授業を受けることに否定的なイメージを持っている人さえもいます。

Shri Guru Ram Rai Institute of Medical and Health Sciencesが医学生を対象に行った調査によると、医学生の11.3%が医療コミュニケーションのスキルを高めることに否定的な姿勢を示しています。また10.6%の学生は、コミュニケーション能力の向上に対して、肯定的でも否定的でもない、完全にニュートラルな姿勢をとっていました。

11.3%という数字は非常に少ないと思われるかもしれませんが、これらの学生は将来、患者の命に直接関わる医療従事者になるわけですから、そのコミュニケーション能力は患者の体験に大きな違いをもたらします。また医学生は将来、他の医療従事者と一緒に仕事をすることになりますが、ミスを回避するための適切な手順を踏むには、最適なコミュニケーションのパイプラインが必要です。

今回の調査では、90%の学生がトレーニング後により効果的な医療コミュニケーションができるようになったという結果が出ています。

医療コミュニケーション教育が重要な理由

医療におけるコミュニケーションの重要性は広く知られています。医療従事者と他の医療従事者や患者との間のコミュニケーション不足が、医療ミスの原因の多くを占めています。

医療従事者の間のコミュニケーション

医療従事者は1人で仕事をしているわけではありません。医師、看護師、薬剤師など、それぞれが補完的な役割を担っているため、努力と注意が必要であることは言うまでもありません。

ミシェル・オダニエルとアラン・ローゼンスタインの著書「Patient Safety and Quality」の第33章では、「米国で入院した患者の5分の1以上が、スタッフが矛盾した情報を提供する、またどの医師が自分のケアを担当しているのかをスタッフが理解していないといった、病院のシステム上の問題を報告しているという証拠がある」と述べています。

医療従事者間のミスコミュニケーションが、時として臨床エラーの最大の原因となることがあります。このことは、若い専門家に、患者だけでなく同僚とのコミュニケーション方法を教えることの重要性を証明しています。

患者と医療従事者のコミュニケーション

患者は、医療機関での会話を理解できなかったり、医療従事者があまり共感してくれていないという印象を受けたりすると、良い印象を持たずに病院を後にする傾向があります。また患者のヘルスリテラシーが医療従事者に比べて低いことも大きな問題です。これが原因で、患者の理解度が著しく低下してしまうのです。

学生が技術的なことだけを教えられ、周りにヘルスリテラシーの高い人しかいないと、患者が納得のいくレベルで話をすることができなくなります。同様に、患者も医師の話を理解できないと感じ、気軽に質問できなくなってしまいます。患者の医師に対する支持についてThe Institute for Healthcare Communicationが行った調査では、患者が医療機関の指示に従わなかった理由が示されています。

  • 39%が推奨された治療法に同意しなかった
  • 25%が指示に従うのは難しいと感じた
  • 7%が何をすべきか全く理解できなかった

これらの問題は、コミュニケーションを強化することで、間違いなく改善または解決することができます。効果的なコミュニケーションプロセスは次の通りです。

  • ケアの質と患者アウトカムの向上
  • 患者体験の向上
  • 患者満足度の向上
医療コミュニケーションの質を「TeamSTEPPS」の視点で評価するためのVosaicの画面例

臨床医のストレス軽減と燃え尽き症候群の予防

医療コミュニケーション教育の現状

ほとんどの医療機関の養成課程では、コミュニケーションに関する何らかの過程が実施されていますが、他の臨床業務のトレーニングほど優先されているわけではありません。

Academic Medicine誌の記事によると、「Joint Commissionは、有害な患者アウトカムの約70%が医療従事者と患者の間、または医療従事者自身のコミュニケーション不足に起因すると報告している。この問題に対処するため、医学部ではコミュニケーショントレーニングに即興練習を取り入れるようになった。」とあります。2012年から2016年にかけて、ストーニーブルック大学医学部では、任意の選択科目としてコミュニケーションコースを開講しました。このクラスでは、さまざまなコミュニケーションのシミュレーションや演習を行い、即興で演じるという実習が行われました。当時の280人の医学生のうち、この選択科目に進んで申し込んだのは76人だけでした。

学生は、医学部入学後に知識が大幅に増え、自分が知っていることを実践して伝える能力に強い自信を持つようになります。しかし、チームワークや患者とのやりとりなどといった実践的なコミュニケーション能力は、大学1年生程度でしかありません。

将来医療現場で働くには、教育によって形成期にコミュニケーションスキルを身につけることが絶対に必要です。学生は、指導者との出会い、教授との出会い、そして授業からコミュニケーションの実践を学びます。このような授業や出会いは、学生がコミュニケーションスキルを身につけるのに最適なタイミングです。なぜなら、まだ習慣的な医療コミュニケーションができていないからです。形成期の学部教育において、何らかのシミュレーショントレーニングを提供するコミュニケーションコースは、医療現場での患者満足度が著しく高いことが証明されています。

このような知見は広く知られていますが、依然として、多くの大学ではコミュニケーション教育を体系的に実施していません。

Vosaicのビデオ分析を活用すれば、医療コミュニケーション教育の質を向上できます

Denver Health Medical Centerが行った「Improving Patient Safety through Provider Communication Strategy Enhancements」と題した研究では、多様な診療環境で柔軟に使用・適用できるリソースや戦略を活用して教育を強化することを目標としました。当然のことながら、研究者たちはコミュニケーションとチームワークのスキルに投資することで、患者満足度が向上するという結論に達しました。さらにこれらのスキルを統合するために、シミュレーションで練習することを推奨しています。

シミュレーションを設定して実行するのは大掛かりでコストもかかります。しかし、Vosaicのようなツールを使えばその必要はありません。必要なのはモバイルデバイスと、省察と学習への意欲だけなのです。Vosaicは柔軟性を考慮してデザインされているので、様々な医療シミュレーションを観察、評価することができます。また、Vosaicで収集したデータは、目標とする改善点や、シミュレーションの効果を数値化するために活用できます。


この記事は、vosaic.comのブログ「Teaching Communication in Healthcare Education」を翻訳したものです(画像とも)。

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