今、なぜこれほど多くの学校で授業診断や授業研究が行われているのでしょうか。その理由は、「教師が自分の指導実践について、意義のあるフィードバックを受けられる」からです。教師であれば誰しも、自分の教えたことがどれだけ伝わったか、自分の教え方のどこが欠点なのかを理解し、改善を続けていくためのマインドセットを必要としています。ほとんどの校区において、教師の客観的評価は限られた授業の中で行われるため、そこには正確な観察と診断基準が欠かせません。


この記事は、vosaic.comのブログ「Conducting Better Teacher Observations」を翻訳したものです(画像とも)。


新しく授業診断を始めたり、現在の診断方法を刷新したりするのは難しいことです。関係者すべての希望を満たそうとするとなおさらです。一言で言えば、観察をする人が過度の責任を負わなくてはなりません。テクノロジーの発達によって技術的な問題は解決されましたが、授業の中に現れるアクションを正確に観察するには、依然として苦労が伴います。それゆえ、その結果を待っている教師を適切に支援できていないのです。これは観察者の責任ではありません。一般的な「ルーブリック」(授業やカリキュラムで求められる到達目標を、どの程度達成できているかを確認するための評価ツール)の多くは長すぎるか、目的に合っていないのです。ついつい、1人の観察者が把握できる以上のデータを期待しがちですし、観察者自身も一度に多くのことを評価しようとしがちです。

場合によっては根本的な手順の問題があったり、システム上の問題もあります。観察者にあらかじめ観察スキルを習得する時間を与えていなかったり、教師自身が何を期待しているのか、明確になっていないのかもしれません。観察後、校長が教師にフィードバックを与える時間を設けていないのかもしれません。

これらの根本的な問題には対処法があります。中でも最も効果的な方法は、高品質の機器を導入することです。ここで言う高品質とは、複雑で高価な機器やメカニズムを購入することではありません。必要な条件は2つだけ、最適なルーブリックを開発すること、そしてそのルーブリックを簡単に実装できるビデオプラットフォームを利用することです。

最適なルーブリックの開発

最適化されたルーブリックこそが、最も効果的です。教室での観察に関する調査研究によれば、最も効果的なルーブリックは以下の基準を満たしていると示唆されています。

一貫性:県や学区の教育基準に沿っているか。
簡潔さ:できるだけ少ない診断項目で、できるだけ有用な情報を収集できるか。
明確さ:誰が見ても誤解しない言葉を使用しているか。
焦点:使われている指標は生徒の成長に直接関係したものか。
これらの4つの条件は、効果的なルーブリックの開発に有効ですが、それ自体では十分に具体的とは言えません。これら4つの基準(一貫性、簡潔さ、明確さ、焦点)を満たすために、さらに特異性を満たす5つの基本条件があります。

明確で合理的なルーブリックを作るための5つの条件

1. 観察可能であること

誰もが診断を実施できるために、まず重要なことです。観察できないものを観察しろと言われても、無理なことです。観察者に「教師が何を考えているのか」、すなわち教師の考えを読んだり、最小限の情報で含意を引き出したり、特定の指導に対する教師の目的を想像したりするようなことをさせてはいけません。代わりに、「どんな行動をしたのか」を記録することだけに責任を持たせるのです。「観察可能であること」には、2つの側面があります。第一に、「観察可能」とは、教師の内面ではなく、外部に現れる行動のことです。例えば、

「教師は誤解に対処する」

これは外部から観察可能な動作ですが、

「教師は概念を生徒に伝えるための戦略を使用する」

これは観察可能ではありません。

次に「観察可能」とは、特定の期間にわたってアクションを合理的に検出できるかどうかに関係します。複数の授業時間にわたって発生する行動の場合は、ルーブリックから除外する方が適切です。

「教師は生徒に複雑な質問を投げかける」

これなら1回の授業の中で観察、認識できる行動ですが、

「教師はデータに応じて特定のレッスンへのアプローチを変更する」

こちらは、そうではありません。

2. 生徒目線であること

この2番目の条件は、教師と観察者の両方が指導の目標、つまり「生徒の教育」を見失わないようにすることです。あくまでも生徒の成長が目的ですので、ルーブリックも教師の行動だけに焦点を当てるべきではありません。ルーブリックには、観察可能な生徒の行動を含める必要があります。教師の指導ではなく生徒の学習という視点から、観察者は「生徒に何を学んでほしいのか」「生徒の学びをどうやって把握するのか」と自らに問うことができます。

「以前に教えた資料を確認すると、X人の生徒の手が上がった」

これなら、学生の成果に焦点を当てていますが、

「教師が生徒に対して、課題を提出すること、良い回答を提出することを再三強調している」

これでは、焦点は教師だけに当たっています。生徒の学びを把握するもう1つの測定方法は、生徒が授業に集中しているかどうか、集中していないとしたら、集中させるまでに教師がどれくらいの時間をかけたかを評価してみることです。

(後編に続く)


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Vosaicはアメリカ・ネブラスカ州リンカーンに本社を置くFACTSが展開する、教師教育、医療教育、指導者育成、専門能力開発のためのビデオプラットフォームです。数多くの教育機関、教育委員会、医療機関、ビジネスコーチング会社等に採用され、授業研究・授業評価やシミュレーショントレーニングなどのフィードバック、省察など、専門能力の開発のために用いられています。

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