この記事は、vosaic.comのブログ「Conducting Better Teacher Observations」を翻訳したものです(画像とも)。


前編から続く

3. 高い期待を反映していること

学校や校区の環境によっては、教師に高い期待をすることに対して直感的に抵抗を感じるかもしれません。けれども、質の高いルーブリックには必要なことの1つなのです。実際、高い期待は教師のレジリエンス(回復力)とエフィカシー(自信)の両方を育てることになり、心理的資本の増加につながります。どのくらい改善したかを測る尺度がないために、最低限のパフォーマンスで許容してしまうのは、標準的な教師にとってよくあることです。例えば、

「教師は、すべての生徒のニーズが満たされていることを証明し、必要に応じて苦労している生徒をサポートできる」

これは、教師が満たすべき高い基準であるため、教師は継続的に改善に取り組みます。

「教師はある授業の指導に必要なテクノロジーを使用する」

単なるコンプライアンス主導型の目標であり、実際のメリットはほとんどありません。

高い期待を生み出すもう1つの効果的かつ必要な方法は、パフォーマンスのレベルを区別することです。次のレベルに到達するための不可欠な基準を教師が明確に理解していれば、「常に改善の余地がある」という古い言葉のように、教師は常に成長と発展に挑戦します。例えばルーブリックの中で、生徒の高度な思考スキルを開発を支援する教師の技量のレベルを「改善中」と「高評価」として特徴付けることができます。

改善中

「生徒のより高いレベルの思考スキルを開発するために、教師が質問を活用する」

高評価

「教師は、質問や他のさまざまな指導戦略を駆使して、生徒のより高いレベルの思考スキルを開発する。その効果は、質問に対する生徒の思慮深い回答の長さによって証明される。」

4. 発散的な質問と収束的な質問の混合

ルーブリックに追加すべき、シンプルかつ役立つ効果的なアイテムは、教師が収束的な質問と発散的な質問を組み合わせていることです。これにより、授業の運営について興味深い示唆を得ることができます。収束的な質問とは、1つの単語またはフレーズの回答を求める、通常すぐに正解のわかる質問です。発散的な質問とは、主題に関する知識だけでなく、思考、解釈、および思慮深い応答も必要とする質問です。多様な形で質問することで、発見と学生の関与を促進します。どちらのタイプの質問も、生徒に何が不足しているのか、それを判断するのに役立ちます。従って、一般的にはこのバランスのとれた混合がベストプラクティスです。その比率はその授業のニーズに基づいて決定されます。

5. 補助資料を重視しないこと

授業観察が目的なら、授業計画の規則、標準のガイド、生徒の制作物といったサポート資料の評価をルーブリック項目に含めてはいけません。観察者が目の前の教師の行動から注意をそらさないよう、これらの基準は別々のリソースと時間を使用して評価するべきです。例えば、

「教師はグループワーク時間を最大化するために工夫をする」

これは、特定の教師の努力とリソースを抽出する基準ですが、

「教師は、アイオワ州の3年生の授業計画から第7週のセクションA、B、およびCを完了する」

これは特定のサポート材料に基づく基準です。

ビデオの力を活用すること

観察者が何に注意を払うべきか、その明確かつ簡潔な定義が役に立つためには、教師が実行するアクションを実際に見ることができなくてはなりません。教育用のビデオプラットフォーム、Vosaicの活用場面がここにあります。あらゆる教室で、重要な瞬間が見過ごされています。Vosaicを使えば、観察者がそれらの瞬間を記録し、識別し、そして共有することができます。「ダニエルソン」のようなベストプラクティスのフレームワークに基づいてフィードバックフォームを作ることも、重要な観点を含んだルーブリックを使って、目標到達に最適な独自のフレームワークを作成することもできます。ビデオの録画中または録画後に、作成されたフォームを使用して重要な瞬間をマークアップできます。さらにコメントを追加してフィードバックしたり、マークした瞬間とコメントを含むビデオを、他のユーザーと共有してレビューすることもできます。

すべての重要な瞬間をリアルタイムで観察し、記憶し、書き留めておこうとするのは圧倒的に大変なタスクです。その代わりに、ビデオを使って授業診断をすれば、ライブでの観察を行いながら、いつでもビデオに戻って確認ができるのです。そのメリットは単なる観察を超えています。ビデオによって授業方法の有効性が確かめられ、教師が事実に基づくフィードバックを受け、継続的な改善を実現します。自己省察とピアフィードバック(仲間からの建設的なフィードバック)の両方が可能になるのです。同僚教師が観察者をサポートして、教師の成長を支援できる立場にもなれることを意味します。教師自身も学習者として関与すればするほど、指導実践はより良くなります。ネブラスカ州リンカーンのPrytle Elementaryの指導コーチであるMatt Rinne氏は、Vosaicのビデオプラットフォームについて次のように述べています。

「Vosaicを使うと、教師は自分の指導の中の改善したいことに集中できます。指導担当として、教師たちの目標に合ったフィードバックフォームを作成し、そのフォームを使って録画中に分析を行うのは本当に簡単です。」

ビデオは、誰の意見も進歩を妨げるものではないことを証明します。その代わり、事実に基づいたデータを収集し、指導者に改善を促す証拠を構成することができます。またビデオは指導から煩わしさを軽減し、教師に自分自身の姿を見返し、自己省察する機会を与えます。自分の指導している姿を見て、教えること、学ぶことに関する自らの考えを肯定したり、改善したりするための証拠を見つけることができます。その結果、偏見を排除することができるのです。

コロラド州デュランゴのSt.Columba校の校長、Kevin Chick氏は次のように述べています。

「文書ではなくVosaicを使用して、後で教員室でビデオを確認したところ、文書での記録内容があまりに偏っていたことがわかりました。文書に書きとめようとしているうち、多くの重要なアクションを見逃していたのです。」

最後に

適切なルーブリックとビデオの利用によって、授業診断を改善するためにさまざまな施策を取ることができます。明らかに観察可能な基準のみを含んだ簡易バージョンのルーブリックといった補足的なツールを開発すれば、指導主事は最も重要な領域に集中できます。これらの問題は、教師、観察者、議長などの利害関係者自身にも伝える必要があります。フィードバックの内容を議論し、それを実装するために協調して努力することは、その学校自身のニーズに合わせて調整するための効果的な方法です。最終的な目標は、教育者のニーズが満たされることなのです。


Vosaicについて
Vosaicはアメリカ・ネブラスカ州リンカーンに本社を置くFACTSが展開する、教師教育、医療教育、指導者育成、専門能力開発のためのビデオプラットフォームです。数多くの教育機関、教育委員会、医療機関、ビジネスコーチング会社等に採用され、授業研究・授業評価やシミュレーショントレーニングなどのフィードバック、省察など、専門能力の開発のために用いられています。

橘図書教材について
日本のスポーツ界へのパフォーマンス分析システムの普及に20年間努めてきた代表者が、2019年に設立しました。スポーツを超えた幅広い分野の教育にもビデオコーチングを普及して貢献すべく、Vosaicの日本国内総代理店として販売とサポートを展開しています。
共訳書スポーツパフォーマンス分析入門(株式会社大修館書店)
連 載スポーツパフォーマンス分析への招待(月刊トレーニング・ジャーナル/有限会社ブックハウス・エイチディ)

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