タイラー氏はビデオの活用にはメリットがあると、即座に確信しました。しかし教師たちを説得するにはもう少し時間がかかりました。教師たちにとって、自分が録画されることに少し疑いの気持ちを持ったり、不快に感じたりすることは無理からぬことです。
信頼感を築くため、ビデオ撮影の目的は改善のための省察だと、タイラー氏は教師たちに約束しました。学年の終わりが来たら、それらを削除するとも約束しました。タイラー氏自身が撮影をされる側にもなって、ビデオ活用のモデルを示したことも大きな効果をもたらしました。自分の弱みも進んで見せようとする彼の意欲が教師を安心させ、撮影への反発を軽くしたのだそうです。
この実践によって、教師たちは改善のための指摘を受け入れやすくなっただけでなく、専門能力の成長と開発も劇的に改善されました。以前に行っていた、校長が教師たちを観察してフィードバックする方法は効果がありませんでした。他校の校長が行っていたコーチングの会話を学んでこようとタイラー氏が出張することさえ、教師たちは挑戦的で、時には侵略的でさえあると受け取りました。一方で学校内での能力開発の機会を設けようとしても、スタッフたちは上司である教師に対してフィードバックすることに積極的ではありませんでした。
観察にビデオとVosaicを使用することで、タイラー氏は実践を改善できました。 「Vosaicを使うと、自分自身の授業を録画し、観察の前後での会話から発見したさまざまな要素にマークを付けることができます。そしてコーチやメンターと一緒にビデオを見て、フィードバックや改善をすることができます。」
タイラー氏は教師と省察する際の対話を適切に計画し、実行することに気を配っています。 「今後の授業について教師と振り返りの対話をした後、自分ではかなりうまく話せたと思いました。しかしビデオを見てマークを付けてみると、言おうと思っていたことのうち2つをそっくり飛ばしてしまったことに気付いたのです。ビデオを見たおかげで、私は次の対話を適切に計画し、うまく実行することができました。」
校長としてタイラー氏が優先事項と考えていることの1つは、学校にいるすべての生徒と大人が確実に学習できるようにすることです。ウェストブルック小学校にVosaicを導入することで、彼は教師たちとより生産的な対話を促進し、専門能力の開発につなげることができました。彼自身も個人的に成長し、教師たちの成長を支援し、最終的に学校全体での学習の改善を促進したのです。
この記事はvosaic.comの記事「Helping Teachers Improve Instruction Through Their Own Agency」を翻訳したものです。
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Vosaicについて
Vosaicはアメリカ・ネブラスカ州リンカーンに本社を置くFACTSが展開する、教師教育、医療教育、指導者育成、専門能力開発のためのビデオプラットフォームです。数多くの教育機関、学区、医療機関、ビジネスコーチング会社等に採用され、模擬授業やシミュレーショントレーニングなどのフィードバック、省察など、専門能力の開発のために用いられています。
橘図書教材について
日本のスポーツ界へのパフォーマンス分析システムの普及に20年間努めてきた代表者が、2019年に設立しました。スポーツを超えた幅広い分野の教育にもビデオコーチングを普及して貢献すべく、Vosaicの日本国内総代理店として販売とサポートを展開しています。
共訳書:スポーツパフォーマンス分析入門(株式会社大修館書店)
連 載:スポーツパフォーマンス分析への招待(月刊トレーニング・ジャーナル/有限会社ブックハウス・エイチディ)