*インストラクショナル・コーチング:教師の成長を支援するために、現状の分析、目標設定、目標達成のための指導方法の特定と説明、目標達成までのサポートを行うコーチング。
(参考:https://www.instructionalcoaching.com)
教師なら誰でも、成長したいと望むものです。ある調査によると、何らかの不満を抱いて離職した教師の理由の1位は「管理職からの十分な評価やサポートを受けられなかったこと」です。裏を返せば、教師の成長に十分な投資をした学校こそが、優秀な教師を確保できるのです。
教師1人1人に具体的な成長の機会を提供する、それがインストラクショナル・コーチングの取り組みです。
「管理職が教師に与えることができる最高の贈り物、それは反省的実践者として自らの指導力を開発し、それを実践する機会です」。
そう語るのは、FACTS Education Solutionsのコーチング・コーディネーター、Donna Moss氏です。Moss氏は長年、公立学校の教師とカトリック学校の校長を務めました。現在はFACTSに所属し、幼稚園から高校までの教育や学習を支援するプロのインストラクション・コーチ陣をコーディネートしています。
教師を効果的にサポートするインストラクション・コーチングの戦略について、Moss氏は次のように語りました。
インストラクショナル・コーチングのベストプラクティス
継続的なフィードバックループを約束すること
「免許を取得した時点で、教師としての成長が止まってしまうようではいけません」
Moss氏が強調するのは、教師が継続的に成長する機会の重要性です。教師が反省的実践者として成長し、また学んだことを実践していくためには、1日、または1週間の中でその時間を確保しなくてはなりません。そのためには、まず時間と場所を作ることが必要です。
Moss氏のチームのコーチ陣は、教師へのコーチングにビデオプラットフォーム「Vosaic」を使っています。Moss氏が教師になったのは、学校でビデオを活用した観察やコーチングが行われるよりもずっと前ですが、ビデオが教師の成長に与える効果を高く評価しています。
Moss氏はVosaicを「教師の成長を支えたいインストラクショナル・コーチのためのツール」だと言います。ビデオによって、教師は自分の良い習慣や悪い習慣を確認し、自然と自分を見つめ直そうという気持ちを持ちます。さらにMoss氏は「自分の指導実践を改善したいと思うなら、反省と振り返りを行い、”ベストプラクティス” に向けて積極的に改善していかなくてはなりません」と続けました。子供たちのために向上しようという意欲がなければなりません。ビデオでの振り返りは、教師にその意欲を植え付けるのです。
Moss氏が推奨する戦略の1つは、教師がコーチと過ごす時間が終わった後も、セルフコーチングの時間を維持することです。その時間を、ビデオを使った自己省察に充てるのです。
普段通りの授業を維持すること
「「ビデオ・フィードバック」は校長にとっても素晴らしいツールです。いくつもの授業を観察できるからです。しかも、より自然な状態に近い授業を観察できるのです。」
例えば校長が紙とペンを持って、授業の場で観察していると想像してみましょう。生徒や教師の行動が普段と変わってしまうかもしれません。しかし、ビデオなら授業を妨げることはありません。若者は録画されることに慣れっこです。生徒の両親のiPhoneが常に子供たちを撮影しているのですから。しかし校長やコーチが教室にいるとなると、態度は一変します。
自然な授業を保つというだけでなく、スケジュールの重複を減らす利点もあります。5人の先生が、午前10時からの授業をコーチや校長に見てもらいたいと言ってきたら、対応できるでしょうか。Vosaicなら、校長やコーチが最も都合のよい時間帯に、その5つの授業をすべて観察できるのです。
教師の体験をパーソナライズすること
録画した授業を長時間見るのが好きな先生もいれば、1時間のコーチングセッションの中で10分間だけビデオを確認したい先生もいます。
「Vosaicの柔軟性のおかげで、コーチは教師の要求に応えることができます」とMoss氏は語ります。「必要なところだけ、あるいは自分の見たい部分だけを見ることができるからです」
Moss氏とFACTS Edのコーチは、教師たちとの信頼関係を築くことにも努めています。コーチは教師に対する「評価者」ではないのです。
「私は、コーチングは教師にとって『スパでのトリートメントのようなもの』であってほしいと願っています。教師には、コーチングの時間を自分のための時間、誰かがあなたをケアしてくれる時間と考えてほしいのです。自分のことを気にかけてもらい、認めてもらうための時間なのです」
スキルを身につけ、それを積み重ねること
Moss氏が最もやりがいを感じる瞬間、それは教師と一緒に授業の内容を見直した後、改善のための方策を実践する様子を見て、コーチングの成果を確認したときです。統合的、複合的なスキルが、コーチと教師の協働によって構築されていきます。
「これこそ、優れた教師が行っていることなのです」とMoss氏は強調します。「教師は1つのことだけに集中することはできませんが、世界で最も優れたマルチタスクの使い手なのです」
成長のチャンスは無限に
かつてコンピュータが導入される以前、授業診断のツールは紙とペンでした。しかしテクノロジーの進化に伴い、現代の学校は変わりつつあります。
「Vosaicのようなツールを使って何ができるのか。先生たちの成長のため、どのような変化をもたらすことができるのか。それを探求することは、私にとってとても楽しいことなのです」
この記事はVosaic.comの記事「Instructional Coaching Strategies That Support Teachers」を翻訳したものです。(画像とも)。
Vosaicについて
Vosaicの安全なクラウドベースのビデオプラットフォームは、教師、現職教師、管理者が理論と実践のギャップを埋めるために使用されています。簡単な操作でビデオの録画、コメント、共有ができるため、ユーザーはより効果的に観察、指導、自己省察を行うことができます。
Vosaic日本国内総代理店の橘図書教材では、Vosaicの販売、および導入後のサポートを行なっております。また、授業力向上のための授業診断プログラムもご提供しております。ぜひお問い合わせください。
橘図書教材について
日本のスポーツ界へのパフォーマンス分析システムの普及に20年間努めてきた代表者が、2019年に設立しました。スポーツを超えた幅広い分野の教育にもビデオコーチングを普及して貢献すべく、Vosaicの日本国内総代理店として販売とサポートを展開しています。
分担翻訳:スポーツパフォーマンス分析入門(株式会社大修館書店)
著 書:スポーツパフォーマンス分析への招待(有限会社ブックハウス・エイチディ)