この記事はVosaic.comの記事「Deliver Feedback That Will Actually Develop Teacher Skills」を元に、日本国内の事情等に合わせて編集したものです。(画像とも)。
研究授業のフィードバックについて、明確な戦略をお持ちでしょうか。いつもの研究授業を思い起こしてみて、フィードバックの内容が整理されてないと感じたり、観察者の先生方のフィードバックのタイミングや統一感がよくないと感じたら、フィードバックの方法を変えた方がいいかもしれません。同じ教師に対して複数の教師や観察者がフィードバックを行う場合、このことは特に問題になります。
研究授業や授業観察のフィードバックがうまく機能するには、それが研究のエビデンスに基づいていなくてはなりません。質の高いフィードバックは4つのアプローチで構成されており、これを実施すれば、若手の教師が自身の現在のスキルのレベルと望ましいスキルのレベルとの間にあるギャップを認識できます。
質の高いフィードバックは、教師自身の省察を促します。質の高いフィードバックとは、具体的で、頻繁かつタイムリーに行われ、エビデンスに基づいていて、個々の学習目標が盛り込まれているものです。
質の高いフィードバックの4つの条件
1. 具体的であること
よくある問題の1つが、指導する側とされる側、もしくは指導者の間で、取り組むべき課題について合意が取れていないことがあります。全員が同じ考えを持つためには、優先順位の高い「必須スキル」のリストを作成すべきです。これには、授業を行う上で必須の項目を含めなくてはなりません。これを作ることで、どのスキルの習得についてフィードバックを与え、また受けるべきなのか、共通理解を得ることができます。
そして「必須スキル」を診断するルーブリック(診断票)を作成すれば、評価と改善を行うことができます。このルーブリックは自分たちで苦心して作る必要はありません。例えば体育科教育なら「期間記録・相互作用」、医療コミュニケーションなら「TeamSTEPPS」といった診断項目を利用して、ここに挙げた他の項目と連携させれば、うまくいくでしょう。
診断項目を必須スキルで統一し、それをルーブリックで評価・診断すれば、複数の観察者間の見解を揃えることができます。こうして見解が統一されていれば、診断を受ける教師の側も、フィードバックに対する心構えが持てます。最も重要なスキルがわかれば、そのスキルの向上に向けての努力もしやすくなるでしょう。
2. エビデンスに基づいていること
エビデンスに基づいたフィードバックは、診断を受ける側の信頼を高め、モチベーションを向上させるために不可欠です。エビデンスのないフィードバックでは、ストレスを感じ、不満を募らせるだけになります。研究授業中に観察者が「感じたこと」ではなく、実際に起こったことを明確に示すことで、不要な反発心や逃避といったストレス反応を和らげることができるのです。
エビデンスに基づいた統一的な観察を行うための最も効果的な方法は、研究授業や模擬授業をビデオで録画し、フィードバックに利用することです。つまり具体的にどこを改善すればよいか、確認できる環境を用意するのです。また、授業を受けた生徒がどう受け止めているのか、それに対してどのように対応していたのか、その間のずれも解消できます。
ビデオで改善点を発見するためには、ルーブリックが観察可能な行動や項目で構成されていなければなりません。もし、研究授業の目標が曖昧だと感じたら、ルーブリックを作り直す必要があります。ルーブリック開発の際に十分に検討が行われ、どういった行動やスキルが評価されるかを認識していれば(「具体的な」ポイントを思い出してください)、フィードバックの際の会話はより豊かになり、より自然に自己反省を促すことができるのです。
(後編に続く)
Vosaicについて
Vosaicの安全なクラウドベースのビデオプラットフォームは、教師、現職教師、管理者が理論と実践のギャップを埋めるために使用されています。簡単な操作でビデオの録画、コメント、共有ができるため、ユーザーはより効果的に観察、指導、自己省察を行うことができます。
Vosaic日本国内総代理店の橘図書教材では、Vosaicの販売、および導入後のサポートを行なっております。また、授業力向上のための授業診断プログラムもご提供しております。ぜひお問い合わせください。
橘図書教材について
日本のスポーツ界へのパフォーマンス分析システムの普及に20年間努めてきた代表者が、2019年に設立しました。スポーツを超えた幅広い分野の教育にもビデオコーチングを普及して貢献すべく、Vosaicの日本国内総代理店として販売とサポートを展開しています。
分担翻訳:スポーツパフォーマンス分析入門(株式会社大修館書店)
著 書:スポーツパフォーマンス分析への招待(有限会社ブックハウス・エイチディ)